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UK Quantum Hackathon 参加(2024年・2025年)
2024 量子コピュラ
概要
2024年、National Quantum Computing Centre(NQCC)が主催する英国最大級の量子コンピューティング競技会「UK Quantum Hackathon」に初めて参加した。本大会には、BT、NHS、UK Atomic Energy Authorityをはじめとする英国の主要な企業・研究機関が参加しており、当社は量子コンピューティング研究の拡大に加え、研究機関との連携強化やプレゼンス向上を目的として参加した。大学研究者を中心とする当社チームの成果が高く評価され、優勝を果たした。さらに、その成果を発展させ、現在は学術論文としての発表を目指して研究を継続している。
課題
保険数理(アクチュアリー)分野における重要な課題の一つは、保険ポートフォリオから生じる損失分布を正確にモデル化・評価することである。コピュラ(Copula)は複数のリスクの同時分布を表現する有力な手法であるが、高次元のコピュラモデルの構築やサンプリングは計算量が大きく、実務への適用は容易ではない。
本プロジェクトは、ネイチャー誌に掲載された論文「Copula-based Risk Aggregation with Trapped Ion Quantum Computers」を発展させ、保険損失を含むポートフォリオのリスク集約を評価する手法を研究している。このリスク評価は、自然災害のような大規模災害によって保険金請求や金融市場に同時に大きな影響が生じる場合でも、保険会社が規制上求められる十分な支払余力を確保していることを検証する上で極めて重要である。一方で、このようなモデルは計算負荷が非常に高いという課題がある。
アプローチ
本研究の主な新規性・技術的貢献は以下の3点である。
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保険損失分布に適した量子表現手法の開発
保険損失分布は裾の重い(Heavy-tailed)特性を持ち、株価リターンなどの金融市場データとは異なる統計的性質を示す。そのため、保険損失データを量子コンピュータ上で効率的に表現するための専用のデータ埋め込み(Embedding)手法を開発した。 -
限られたデータでも学習可能な新しい学習手法の提案
保険データは1日あたり1サンプル程度しか得られないため、利用可能なデータ数は本質的に限られており(最大でも約10⁵件程度)、KLダイバージェンスを用いた学習では学習の安定性に課題が生じる。そこで、この課題を解決する新たな学習手法を提案した。本手法は保険分野にとどまらず、量子機械学習(Quantum Machine Learning:QML)の幅広い分野への応用も期待される。 -
ノイズの多い量子ハードウェアに対応した階層的学習手法の開発
現在の量子コンピュータはノイズの影響を受けやすく、学習が不安定になりやすい。そこで、まずシミュレータ上で小規模な量子回路(Ansatz)を学習し、その学習結果をより大規模な量子回路へ引き継ぐ階層的な学習手法を採用した。さらに、その学習済みパラメータを実機の量子コンピュータの初期値(Warm Start)として利用することで、学習の安定性と効率を向上させた。
ステータス
2026年7月時点で、研究チームはプレプリントの査読・最終レビューを進めており、量子コンピューティング分野の学術誌への論文投稿を目指している。また、本アルゴリズムは、本プロジェクトのパートナーであるQuantinuumが提供する実機の量子コンピュータ上で学習および実行され、その有効性を検証している。
2025 道路維持管理
概要
2024年大会での優勝を受け、2025年にはNational Quantum Computing Centre(NQCC)が主催するUK Quantum Hackathonに再び参加した。量子コンピューティング研究のさらなる発展に加え、プレゼンスの向上や新たな研究連携の構築を目的として参加し、大学研究者を中心とするチームの大きな貢献により、2年連続で優勝を果たした。本取り組みは、NQCCの支援を受けてそれまで数か月にわたり進めてきた研究プロジェクトを発展させたものである。
課題
道路インフラは、舗装、橋梁、トンネルなど、保守・点検方法の異なるさまざまな資産(アセット)で構成されている。こうした重要な社会インフラの老朽化が進むにつれ、機能を維持するために必要な点検・保守作業は増加している一方、そのための予算はほぼ横ばいで推移している。そのため、限られた予算の中で保守業務をより効率的に実施することが求められている。
特に、道路閉鎖を伴う保守作業は最もコストが高く、社会への影響も大きい。
本研究では、保守作業のスケジュールを最適化することで、道路閉鎖の回数をできるだけ削減するとともに、一度の道路閉鎖で実施できる作業量を最大化し、交通ネットワークへの影響を最小限に抑えることを目指している。
アプローチ
本研究では、NQCCが支援するSparQプログラムで開発した手法を発展させ、D-Wave社の量子コンピュータに対応したQUBO(Quadratic Unconstrained Binary Optimization)定式化を採用するとともに、ハイパーパラメータ最適化を実施し、より大規模な問題への適用・評価を可能にした。
さらに、問題設定における一部の単純化した仮定を見直すことで、アルゴリズムの汎用性を高め、実際の道路保守計画により近い条件へ適用できるよう改善した。加えて、Gurobi Optimizerを用いた古典的な最適化ソルバーを新たに実装し、量子ソルバー、量子・古典ハイブリッドソルバー、および古典ソルバーの性能比較(ベンチマーク評価)を実施した。
ステータス
研究チームの成果は、NQCC主催のUK Quantum Hackathonにおいて高く評価され、優勝を果たした。また、審査員からは、提案したソリューションの倫 理的・社会的影響を十分に考慮した点についても高い評価を受けた。