ステータス
2026年7月30日時点で、本モデルは 世界規模で稼働しており、多くの国・産業について各産業を1つの代表企業としてモデル化するとともに、それらを結ぶ国際海上輸送ネットワークも組み込んでいる。現在、過去の災害事例を用いた検証を進めており、2011年の東日本大震災による経済波及影響を再現できることを確認している。
今後は、日本国内を企業単位で表現する、より高解像度なモデルと統合するとともに、さらに多くの災害事例による検証を進める。また、初期ユーザーとの共同検証を通じて実務上の有用性を確認し、ダッシュボードの機能改善を進めていく予定である。
災害時のサプライチェーン・ショックのモデリング
概要
地震によって工場の操業が停止したり、港湾封鎖によって船舶の輸送が滞ったりすると、その影響は被災地域だけにとどまらない。サプライヤーや顧客を通じて世界中のサプライチェーンへ波及し、経済活動全体に大きな影響を及ぼす。こうした波及影響は予測が最も難しい一方で、企業の事業中断にかかわる保険の引受・料率設定、信用リスク評価、さらにはサプライチェーンのレジリエンス計画において極めて重要な要素となる。
OXFIDAは、オックスフォード大学発スタートアップであるMacrocosmと共同で、災害による経済波及影響をシミュレーションする世界経済モデルを開発している。本モデルは、日本経済を対象としたシミュレーションモデルを基盤として発展し、現在では世界各国・あらゆる産業部門に加え、それらを結ぶ海上輸送ネットワークまで対象を拡張している。
課題
現代のサプライチェーンは、数億社の企業と数十億に及ぶ取引関係が相互に結び付く、極めて複雑なネットワークで構成されている。このネットワークの一か所で自然災害が発生すると、その影響は被災企業だけにとどまらず、取引先 企業へと連鎖的に広がり、最終的には発生地点から遠く離れた地域や産業にまで波及する。
こうした波及影響は予測が難しく、事業中断にかかわる保険の料率設定を行う保険会社、資本十分性を評価する金融機関、サプライチェーンのレジリエンス強化を進める製造業にとって、大きな不確実性とコストの要因となる。災害による影響がサプライチェーン全体へどのように伝播するかを把握できなければ、適正な保険料の設定や必要資本の見積り、将来のサプライチェーンの寸断に備えた対策を講じることは容易ではない。
アプローチ
本モデルは、経済全体を平均値で表現する従来の手法とは異なり、数百万の企業や産業が互いに取引を行い、在庫を保有する相互依存ネットワークとしてモデル化している。自然災害は各企業の生産能力に対するショックとして与えられ、その影響がサプライヤーネットワークや国際海上輸送網を通じてどのように波及していくかをシミュレーションする。
本モデルの最大の特徴は、因果関係に基づくシミュレーションである点にある。過去の統計的な相関関係に依存するのではなく、実際の企業間取引データや生産データに加え、供給不足が発生した際に企業がどのように行動するかという経済メカニズムを組み込むことで、災害 の波及影響を予測する。
現在開発中のダッシュボードでは、保険引受担当者、信用リスク分析担当者、サプライチェーンアナリストが、独自の災害シナリオを入力し、その経済的・財務的影響を迅速に評価できるようになる。